YTL Hospitality REITへ投資してみよう!

皆様こんにちは。こちらの記事ではマレーシアのREITの個別銘柄で私自身も投資しているYTL Hospitality REITについて、投資として何故魅力的なにかを中心に解説していきたいと思う。REITの特徴、裏話、マレーシアREITの代表的な銘柄やマーケットは下記の記事にて整理してるので事前に目を通していただけると良いと思う。

マレーシアのREIT(M-REITs)について

YTL Hospitality REITを実質的に運営しているのは誰?

M-REITsデータ一覧

上の表はマレーシアにある全18個のREITとそのいくつかの指標の一覧になる。18行目がYTL Hospitality REITだ。見て頂けると分かる通り、このREITはマレーシアでただ一つのホテル特化型REITになる。ホテルREITはグローバルでは無数にあるが、マレーシアでは一つだけだ。なので、ホスピタリティ業界及びマレーシアへの投資Exposureを増やしたい方にはこのREITがほぼ唯一の選択肢になる。

別記事:マレーシアのREIT(M-REITs)について、でも解説した通り、REITを調べる上で、資産パイプラインを供給してくれるスポンサー企業、及びアセットマネジメント会社の事を知るのは必須だ。YTL Hospitality REITへホスピタリティアセットを提供しているのはYTL Corporation Berhad (以下YTL Corp)という会社になる。YTL Hospitality REITのアセットマネジメントはPintar Projek Sdn Bhdという会社が行っており、この会社の70%の株式もYTL Corpが保有している。つまり、YTL CorpがこのREITによる資産取得、運用をすべて決定しているのだ。YTL Corpは巨大なコングロマリット企業であり、以下の事業を行っている。

  • 電力プラント開発運営(マレーシア)、電力供給網オペレーターへの投資(オーストラリア)、電力プラントへの投資(インドネシア)、上下水道運営事業(イギリス)等のUtility事業
  • Express Rail Link(KL-KLIA間)の鉄道のJV共同運営(運営会社の株式50%保有)とメンテナンス等のO&M事業
  • セメント製造販売事業
  • 建設事業及び不動産開発事業(オフィス、レジ、商業施設、ホテル等)
  • ホテル、リゾート運営事業(自社保有のホテルの運営がほとんど)
  • テクノロジーインキュベーション事業(Wimaxブロードバンドサービス提供やデジタル広告等)
  • REIT事業

このように、セメント製造・建設・不動産開発・運営まで不動産のバリューチェーンのほぼ全てを事業領域にしている点が当REITをお勧めしたい理由その一になる。 バリューチェーンの川上から川下を抑えていると、グループ内での知識、マーケットデータ、技術、知恵の蓄積とシナジーが相当な強みになっているはずだ。この強みはホテルアセットへの投資や開発に大いに貢献しており、YTL Corpがクオリティの低いホテルには投資しない、開発しない、という一種の安心感、暗黙の了解が得られるのだ。YTL Corpは季節性のある不動産開発事業の他に多くの安定収益が得られる事業も展開しているため、毎年安定的に300億円超の税引後利益があるのも安心材料だ。このような会社が本REITを運営し、ホテルアセットの供給も行っている事は大変心強い。ちなみにYTLというのは創業者であるTan Sri Dato’ Seri (Dr) Yeoh Tiong Layの名前の頭文字が由来である。Tan Sri、Dato’ Seriって何については下記別記事を参照。

マレーシアの称号、結局どれが凄いの

素晴らしいポートフォリオ

次に、YTL Hospitality REITのポートフォリオについて。2018年12月時点で保有している不動産資産は下表の通り15物件、総額でRM4,544million(日本円で約1,200億円)の価値となっている。

YTL Hospitality REIT保有アセット一覧

御覧の通り、JW Marriott KLRitz Carlton KLといったフルサービスラグジュアリーホテルの他、リゾートホテルやビジネスホテルもマレーシアに保有している。リゾートホテルとビジネスホテルも低廉な価格のものではなく、ハイクオリティーなものだ。また、マレーシアのみならず、海外ではオーストラリアでSydney Harbour Marriott, Brisbane Marriott, Melbourne MarriottとMarriottブランドの高級ホテルを所有しており、日本でもHilton Niseko VillageThe Green Leaf Niseko Villageを所有している。オーストラリアでは主要3大都市であるシドニー、ブリズベン、メルボルンに一つずつ高級ホテルを所有する戦略で、日本では逆に日本一のスキーリゾートに集中的にホテルアセットを保有する戦略である。

YTL Hospitality REIT Portfolio

上図のように、資産価値ではマレーシア46.2%,、オーストラリア42.1%、日本11.7%になっている。面白い国の分散だと思う。若干日本のExposureが少ないが、YTL Corpは現在日本のニセコでRitz Carlton Reserve Niseko, Edition, W Hotelの開発を計画している。Ritz Carlton Reserveについては既に建設が開始しており、後者の2つは計画中だ。

YTL CorpとMarriott Groupのパートナーシップ(プレスリリース)
ニセコにおける外資の開発(WSJ)

Ritz Carlton Reserve Nisekoは2020年中の竣工なので、運営後安定稼働し出した2022年頃から本REITに順次組み入れられると見ている。今後の資産取得がすべて借入により行われる前提だと、借入比率上限の50%になるまで追加でRM864million (約230億円)の新規借入が可能となる。これがすべて日本の資産に投資された場合、日本の資産価値のポートフォリオ全体に占める割合は約24%となり、カントリーExposureが非常に調和のとれたポートフォリオになる。

さらに、ホテル運営に関してはマレーシアと日本のすべてのホテルでML(マスターリース)契約で57.9%、オーストラリアのすべてのホテルでMC(マネジメントコントラクト)で42.1%のとなっている。ML契約は賃料保証型で安定なだが、マーケットが良い場合にアップサイドの変動報酬を得られない。一方、MC契約はホテルの実績に連動して賃料が得られる。こちらもシーリゾートやスキーリゾート等のアセットが多いマレーシアと日本でML契約とし、マーケット変動の影響を少なくしてが安定化をしっかり図っている一方、オーストラリアの都市部では人口増や旅行者増によるホテル運営のアップサイドをしっかり享受できる構成となっている。

以上のように、国別Exposureの分散とホテル運営契約形態の分散がとても上手くできているポートフォリオであり、今後さらに改善される事が見込まれる事が当REITをお勧めしたい理由その二だ。

借入金利と不動産利回りとのスプレッド

YTL Hospitality REITの借入金利

上図はYTL Hospitality REITの借入額と借入金利のサマリになる。借入額は約19億リンギット(日本円で約500億円)で資産総額の40.7%となっている(Gearing (%)が該当箇所)。全通貨の平均金利は約4.3%となっている。いずれの通貨の借入金利もマーケット水準だが、オーストラリアと日本での金利が低い分、全体として押し下げられている格好だ。他のREITではマレーシアでの資産が極端に集中して平均借入金利が4.6-5.0%の範囲となっているとの比べ、借入金利でも投資先国が分散されているポジティブな効果が出ている。但し、アセット利回り(アセット額に対して不動産がどの程度の利益を出しているか)と借入金利のスプレッドを見る必要があるので以下で試算してみた。

まずオーストラリアのNet Property Incomeは平時にはRM140millionでアセット額のRM1,950millionに対して7.2%、よって借入金利とNet Property Incomeのスプレッドは7.2% – 4.6% = 2.6%だ。次にマレーシアはNet Property IncomeがRM127.2millionでアセット額はRM2,080millionなのでアセット利回りは6.1%となり、スプレッドは6.1% – 5.0% = 1.1%となる。そして日本はNet Proeprty IncomeがRM22.4millionでアセット額はRM515millionなのでアセット利回りは4.3%、スプレッドは4.3% – 0.8% = 3.5%となる。改めてスプレッドが高い順に並べると、日本(3.5%)、オーストラリア(2.6%)、マレーシア(1.1%)となる。マレーシアは不動産の利回りは日本やオーストラリアとはそれほど変わらないにもかかわらず、借入金利が高いためスプレッドが低いのだ。その逆が日本、そして中間がオーストラリアだ。こう考えると、他のマレーシア国内のアセットに集中してしまっているREITと比べると、オーストラリアと日本へのExposureがある当REITはスプレッド、つまり借入のレバレッジ効果がとても高い事が分かる。今後は日本でRitz Carlton Reserve Nisekoをはじめとした資産が本REITに組み入れられる可能性が高く、高いスプレッドを享受して既存unit holderへ還元できる利益が飛躍的に増大できる事が期待できる

但し、ここで一点補足したい。マレーシアのスプレッドが極端に低いからといってマレーシア資産の取得をやめ、海外資産、特に日本のみにフォーカスする、という結論は尚早だ。借入金利が高いというのは、その国ではみんながお金を借りて何かに投資したり、ビジネスを始めたりと、お金の需要が高い事を指す。よって往々にして当該国では投資、開発、新規ビジネスが非常に盛んで発展が著しくインフレ率も高い事が多い。つまり不動産利回りと借入金利のスプレッドとしては反映されないが、不動産のキャピタルゲインの上昇には反映されるのだ。不動産のキャピタルゲインは売却価格(もしくはリファイナンス)として最終的にキャッシュフローに反映されるので、保有期間中の利回りへの貢献は少なくとも、売却時には大きな売却益が期待できる。

このように不動産利回りと借入利率のスプレッドによるレバレッジ効果とキャピタルゲイン期待の両方の要素を上手くmixさせ、リスクをhedgeした良質なポートフォリオであることが当REITをお勧めしたい理由その三だ。

Asset Enhancement Initiative(AEI)

YTL Hospitality REITではBrisbane Marriott HotelにてAUD20million (約15.2億円)のリノベーション工事を行っている。Brisbane Marriott Hotelの資産価値がRM242million (約64億円)なので資産価値の1/4ものリノベーション工事を行っている事になる。当該工事は全267室の内装工事も含んでおり、これにより客室の販売停止が発生し直近のQuarterly Report (2018年12月末まで)では当該ホテルの稼働率、RevPAR、利益貢献が大幅に減少した。リノベーション工事はその後無事に完了し、2019年1Qに新規開業している。
Brisbane Marriott Hotelのリノベーション記事

また、これに先立ち、2017年4QではJW Marriott KLの大規模リノベーションも完了している。このようなAsset Enhancement Initiative (AEI)をしっかり行っているかどうかはREITを調べる上で非常に重要だ。投資して終わりではなく、しっかり現物不動産の付加価値を上げる施策を行う、これにより不動産の価値を向上させ、結果的に高い収益を得る事ができる。この2件の直近の大規模リノベーションの実績から、YTL Hospitality REITのホテル資産とお客様に対する真摯な対応、またその実行力を感じる事ができた。その他資産も老朽化は避けて通れないものの、YTL Hospitality REITならAEIで長く不動産価値を向上させ続ける事ができる、これが
当REITをお勧めしたい理由その四である。


Unit価格と大口Unit Holder

そして、最後はunit priceと大口unit holderについて。まず下のチャートがunit価格と取引ボリュームだ。

YTL REITのunit価格と取引ボリューム(時系列)

unit価格は2014年の0.9から直近2019年5月16日の1.34まで5年で約50%価格が上昇している。これは年率8.5%の水準だ。これは足元の配当利回り5.87%よりずっと高い。2014年に投資した人は大正解である。勿論その頃は今ほどポートフォリオが安定していなかったのでリスクも高かったのは事実である。このようにREITの魅力として、配当利回りの他に、借入による資産増大によるREIT自身の成長で、unit holderへの利益が高まり、結果unit価格も成長する点が挙げられる。YTL Hospitality REITは、このunit価格の成長率が配当利回り以上に高かった例である。2019年に入り、unit価格が一層成長した理由は、The Green Leaf Niseko Villageの取得とマレーシア中央銀行による政策金利の引き下げによる点が大きいと思われる。前述した通り、日本の資産の利回りスプレッド(不動産利回りと借入金利の差)は3.5%と大きいため、これによるunit holderへの利益増大が評価された格好だ。また、マレーシア中央銀行も2019年5月7日付けで政策金利を3.25%から3.0%へ25bps下げた。これにより、相対的に高くなったREITの配当利回りがより魅力的な投資対象となり、REIT自体の借入コスト負担の減少も見込まれる事から当YTL Hospitality REITへの買いも入ったと考えられる。

マレーシア中央銀行による政策金利切り下げアナウンス

では、今後のunit価格はどう動くだろうか。私は次の3点でさらに上昇する事を予想する。

  1. 日本での新規資産取得の期待。前述の通り、Ritz Carlton Reserve Nisekoはじめ、EditionやWホテルといったブランドが開発され当REITに移される可能性がある。スプレッドが広い日本への投資Exposureの増加は間違いなくunit holderへの利益を増大する。
  2. 時価総額がNAVの約84%で過小評価されており結果、配当利回りも5.86%とM-REITs平均の5.3%を依然上回る水準。2019年に入ってからの一層のunit価格の上昇にも関わらず、依然マーケットはNAVより16%も低い価格水準。上昇の余地はまだまだ残っている。
  3. 大口unit holderがYTL Corp。なんとYTL Corp自身が当REITのunitの54%も保有しているのだ。今後unit単価はまだまだ上昇するとYTL Corpが考えているからこそ、54%もの割合を保有しているのではないだろうか。今がピークと思うなら保有割合を少なくするはずだ。

このように、配当利回りだけではなく、unit単価上昇によるアップサイドも狙える事が当REITをお勧めする理由その五である。

以上、YTL Hospitality REITへ投資すべき5つの理由を記載したが、投資はやはり自己責任。余裕のある範囲で自身で納得した上で是非投資してみて欲しい。今後も引き続き資産運用に関する情報、考察等を記事にしていきたいと思う。

  • Kufong
  • 上海生まれ、日本育ち、米国留学、そしてマレーシア移住。妻と一人娘と一緒にクアラルンプールで仕事をしながら楽しく生活。資産運用、レストラン巡り、旅行、そしてマレーシアが大好き。金融工学修士修了、CFA (Chartered Financial Analyst)。