マレーシアのREIT(M-REITs)について

マレーシアでの中リスク中リターンの資産運用方法の一つにマレーシアREIT (M-REITs)がある。ここではREITの簡単な説明、ストラクチャー、主要なKPI、理解しておくべき事項、そしてM-REITsの現状と特徴を整理したいと思う。実際、私自身が不動産投資及びREITに携わっており、かつM-REITsにも個人で投資しているため、そこで得た知見やなかなか市販の本には記載の無い有用な情報もあると思うので是非参考にして欲しい。こちらで理解を深めた上で、今後はM-REITsの個別銘柄についても少しずつ記事にしていきたいと思う。

REITとは?そのストラクチャーについて

REITはReal Estate Investment Trust = 上場不動産投資信託の略になる。一番簡単な理解としては、REITは一つの上場会社であり、その上場会社の株式(REITの場合はUnitもしくは投資口と表現)が投資商品であり、それを一般投資家が市場で売買しているとイメージすると分かりやすいと思う。上場会社は業績が良い、人気がある、将来への期待が高ければ株価は上がるし、逆だと株価は下がる。REITも正に同様にUnit価格が上下する。とはいえ、REITは通常の株式会社の株式とは違う部分もあるので、下記ストラクチャーチャートを交え説明したい。

REITストラクチャー

上記チャートの中央がREITであるが、通常REITは SPC(特別目的会社)の形態をとっている。このSPCが借入とエクイティファイナンスをして集めたお金で(REITのバランスシートの右側のLiabilityとCapitalという部分)不動産資産(REITのバランスシートの左側のAssetsの部分)を購入し運用していく。このエクイティファイナンスの部分への投資が所謂REITへの投資という事になり、投資口はUnitと呼ばれ小分けされて市場を形成し、一般投資家でも証券ブローカー経由で市場から少額から売買できる。ここまでは通常の株式会社と同じだが、REIT特有の点に関しては主に以下のように整理できる。

  • 不動産は信託銀行へ信託され所有権は信託銀行、信託受益者はREITという形態を取る。これは実物資産を信託銀行が所有する事で投資家であるUnit Holderを保護したり、信託銀行が信託受益権を発行しREITが信託受益権を保有する事で、複雑な不動産そのものの売買ではなく、簡素な信託受益権での売買を実現するため(流動性の確保)等、様々な理由がある。
  • 利益の90%以上を配当すればREITの課税利益に対する法人税の課税は無し。よってほぼ全てのREITは利益の90%以上を配当する。但し、配当額は課税される。マレーシアの場合は10%の配当課税
  • REITはその運用機能をすべて外部のアセットマネジャーに委託する。アセットマネジャーは各種アセットマネジメントフィーをREITから受け取る。また信託銀行への不動産管理処分の指図も行う。
  • REITは基本的に不動産にしか投資できない(その他事業は行えない)。資産は不動産だけ、負債は借入、エクイティはUnitとして市場で取引されるシンプルなバランスシート。
  • REITの収入源は不動産のテナントからの賃料、及び不動産の売買する事で得られるキャピタルゲイン。不動産のキャピタルゲインもREITならば非課税

以上の通り、REITは不動産投資運用にフォーカスし、その利益のほぼすべてを投資家に還元し、利益は非課税、投資家保護もされるストラクチャーになっている。非常に高額で流動性も低い実物不動産への投資を少額から、市場での流動性も担保された形で、しかも非課税メリットがある形で可能にしたのがREITという投資商品という事になる。

本ではなかなか記載の無いREITの裏話

ここまではREITの一般論を記載したがこれは市販の本やWebでも多く説明がされている。ここではそのような情報ソースには記載が無いようなREITの裏話も少ししたいと思う。

投資開発業者がREITのアセットマネジャーの親会社である事が多い

REITのアセットマネジャーがREITの不動産投資運用を行うため、アセットマネジャーの親会社が不動産投資会社や不動産開発業者の場合、REITはこれらの会社が保有する不動産の売却先とされる事が多い。事実上これらの会社がREITの購入不動産を決定できるため、REITはこれら会社の不動産の卸先になるという訳だ。そうすると利益相反が発生する事がある。なぜなら、当然これらの会社は投資した額、開発に要した費用より低い価格ではREITには売却したくは無いので(むしろ高い価格で売却したいインセンティブが働く)、REITが不動産を高値づかみ、あるいはクオリティの低い不動産を購入してしまう可能性がある。これらの会社が運営しているアセットマネジメント会社としては、REIT投資家に対してなるべく安く優良な収益不動産をREIT経由で購入する責務があるものの、自身が保有する不動産を高くREITに卸したいインセンティブもあるため利益相反という事になる。業界ではそのスキームを”リスクをリテール投資家に移してcash化する”と良く言われる。勿論、適正な価格でREITに卸す会社もあるが、すべてがそうではないという点は理解すべきだと思う。REITへの投資を考える際、アセットマネジャーとその親会社、REITが購入する(した)不動産が当該アセットマネジャーの親会社からか否かは要確認事項だ。

アセットマネジャーの収入源

アセットマネジャーの収入源は大きく4つに分けられる。1) 管理運営資産額に比例した管理報酬、2) 不動産のネット運営収益に比例したパフォーマンス報酬、3) 不動産を取得した際、取得価格に比例した取得報酬、4) 不動産を売却した際、売却価格に比例した売却報酬、である。ここから分かるのは、基本的にアセットマネジャーはとにかくREITが保有する不動産の資産額を増やしたい、というインセンティブが働く事だ。不動産を新たに取得するごとに報酬がもらえ、REITが運用する不動産資産が大きければ大きいほど管理報酬がもらえるためだ。REITに借入余力が豊富にあり、新規エクイティファイナンスをして既存unit holderの利益を希薄化しなくても良い場合、REITが借入をすることで不動産資産を増やしていく事は既存unit holderにはpositiveに働く。しかしながら、もしエクイティファイナンスで既存unit holderの利益を希薄化して得たcashで不動産を次々に取得していく場合、unit holderにはpositiveとは言えない。このような傾向が見られたら、それはアセットマネジャーが自身の報酬ばかりを考え、REITのunit holderの利益を考慮していないという利益相反の可能性がある。REITへの投資を考える際、REITの借入余力は十分あるか、過去にunit holderの利益を希薄してでもREITがとにかく資産を拡大して来たか、また今後そのようになりそうか、という点も要確認事項だ。

永久債権の発行

永久債券という言葉をご存知だろうか。通常の債券は返済期限が決められており、その期間中、債券額面に対して一定の利率のクーポン(利子のようなもの)が債券投資家に支払われるというものだ。債券はREITにとって負債であり、デットファイナンスの一種である。しかしながら、永久債券は違う。永久債券は返済期限が定められていない債券の事だ。クーポンが出るのは同じだが、返済期限が無いため通常債券より発行体の信用リスクのインパクトが大きく、よってクーポン率(利率)も通常の債券と比べ高くなる。しかも永久債券は返済期限が無いため、会計上エクイティと見做され、REITの借入上限に抵触しない形でできる特殊なファイナンスになる。これら様々な永久債券の特殊性がREIT投資家にとってnegativeな影響を与える可能性があるのだ。一つは高い永久債券のクーポン率。もしこのクーポン率が永久債券を発行することで得る資金で取得した不動産のネット利回りを上回ってしまった場合、REITは逆ザヤになってしまい、既存unit holderへ還元できる利益が減少してしまう。クーポン率が追加取得した不動産のネット利回りを上回らなくても、高いクーポン率のせいで結局はかなり効率の悪いファイナンスである事には変わりはない。しかも永久なので、将来借入金利が下がった場合、この固定された高いクーポン率が相当な重荷になり身動きがとれなくなってしまう。次に、信用の問題。永久債券は会計上エクイティと分類されるが借入なので、実質的なREITのレバレッジは高くなると市場では見做される。そうすると、格付け会社から低いレーティングをされたり、既存の融資をしてくれている銀行から借り換えをする際に今までよりも高い金利を要求される可能性も出てくる。つまり永久債券によるファイナンスは劇薬なのだ。

実はマレーシアにおいては直近に最大手の一つであるSunway REITが100億リンギット(約2,650億円)もの永久債券の発行を計画しているとのニュースがあった。しかもクーポン率は6%になりそうとの事だ。高い!Edge Marketのアナリストも下記リンクで試算しているが、仮に発行されて、集めた資金で従来資産と同じ利回りの不動産を取得した場合、既存unit holderへ還元できる利益が減少する、と述べている。 REITへの投資を考える際 、このような特殊な劇薬ファイナンスが行われていないか、行われる予定は無いかは要確認事項だ。
Sunway REITの100億リンギットの永久債券は劇薬?

保有不動産の評価額

REITにはNAV (Net Asset Value)という言葉が良く出てくる。これはREITの資産総額から負債総額を引いた額を意味する。そしてこのNAVが全unitの市場価格と比較される。具体的には1 unit当たりのNAVと1 unit当たりの市場価格(現時点の市場の投資口価格)が比較される。もしNAV / unitが投資口価格よりも大きければ、投資口価格は市場ではまだ適正に評価されておらず、NAV / unitまで上昇する余地がある、と判断される。しかしながら、この結論には注意が必要だ。そもそもREITの資産額は市場取引価格では無く、各々の資産を不動産鑑定士に依頼して作成させた不動産鑑定評価額を足し合わせたものに過ぎない。依頼主はアセットマネジャーになる。上記にも記載したが、アセットマネジャーは当然運用資産額が大きい方が管理報酬が取れるし、アセットマネジャーの親会社が当該アセットマネジャー経由で運営するREITに不動産を卸す際には、自身の不動産取得価格以上の価格で卸したいので、不動産鑑定士に依頼して高い価格を付けてもらう事も往々にある。これはS&Pやムーディーズなどが証券会社の依頼で証券会社が組成する金融商品のレーティングを付けるのと同じ原理で、結局お金を払うのはアセットマネージャーなので、不動産鑑定士も彼らの言う通りの金額になるべく近くなるように不動産鑑定評価書を作成する。100億の価値の不動産に対して200億の不動産鑑定評価を出す事は非現実的だが、10%~20%程度の上乗せならパラメーターをイジル事で可能なのだ。要はこのNAVはそのまま真に受けない方が良い。むしろ、対象不動産は過去に誰が所有していて、もしくは開発されたのか、その際の価格、開発コストはどの程度だったのか、といった情報を知る事で(なかなかこれらの情報は公表されていない事が多い)、現在REITにある不動産資産のNAVの水準を測る(過剰評価されていないか)事が重要だ。

KLのオフィス街

マレーシアのREITにはどんなものがある?

さて、ここからはマレーシアのREITにフォーカスして全体像を見ていきたいと思う。まずはどのようなREITがあるか下記の通りざっと一覧表にしてみた。 各種KPIが列に表示されているが、個別REITの紹介と合わせてKPIの説明もしたいと思う。

M-REITsデータ(2019年5月16日付)

さて、まず第一印象としては、たった18銘柄と少ない!と感じられたのではないだろうか?そうM-REITsは18銘柄しかないのだ。ちなみに日本のREIT全体を示すJ-REITsは63銘柄。上の表の10列目のMkt Capが時価総額(百万リンギット単位)になるが、M-REITs全体で約444億リンギット、日本円にして1兆1,700億円程度の市場になる。ちなみにJ-REITsは約16兆円の時価総額なのでM-REITsはJ-REITsの約15分の1の市場という事になる。

11列目のNAVは前述した通り、13列目の不動産鑑定評価額をベースにした不動産資産価値から12行目の借入を引いた純資産を表す。NAVはM-REITs全体で400億リンギット、日本円にして約1兆600億円程度で時価総額を約10%下回る水準となっている。尚、この時価総額とNAVの比率が5列目のPrice to Bookという指標になる。また、時価総額を投資口数であるunit数で割ったものが3列目のPrice / unitで投資口当たりの市場価格を表す。基本的にREITの価格といった場合はこのunit当たりの市場価格の事を指す。同様に7列目はunit当たりのNAVであり、REITの価格とunit当たりのNAVの比も5列目のPrice to Bookとなる。

次に投資家が一番注目するKPIである配当利回りについて。上の表では4列目のDistribution Yieldが配当利回りとなる。本記事を書いている2019年5月16日時点の時価総額に対して直近一年の配当実績額の割合で配当利回りを計算している。M-REITs全体の平均は約5.3%。うーん、意外にそれほど高くない。日本のREITよりも1.0%程度平均が高いぐらいだ。これはマレーシアでは借入金利が高い事が影響していると思う。マレーシアでの借入金利は約4.5%-5.0%の水準だ。REITは借入でレバレッジを効かせる事でエクイティ、つまり投資家への配当利回りを高めるが、マレーシアでは借入金利が高いため利払い負担が大きく、レバレッジ効果があまり出づらい市場のようだ。ちなみに8列目のProperty Yieldは不動産価格に対する賃料利回りの事を指す。

そして9列目のGearing Ratioについて。これは有利子負債借入比率の事である。有利子負債残高を総資産額で割った%の事を指す。M-REITs全体で28.5%と法律で定められた上限の50%まではまだまだ余裕はあるみたいだ。これはエクイティファイナンスで既存unit holderを希薄化させずに借入だけでまだまだ新規不動産資産の取得が可能である事を意味する。M-REITsの歴史は2000年代前半に遡るが、大手ディベロッパーがREITを組成し、自ら開発した不動産を組成したREITに移し上場させたのは2010年頃からと比較的最近である。よって日本ほどはREITの認知度はマレーシアでは高くない(確実に認知度は上がって来てはいる)。従って、REITの大口unit holderも実はREITを組成した不動産開発業者及びその関連会社であるパターンも多い。今後一層認知度が上がるにつれ、借入を起こして新規不動産を取得しつつ、不動産開発業者のunit持分を一般投資家に市場で売却していく事が予想される。M-REITsの各種KPIのupdateは下記Websiteで参照できるので、最新のデータを確認したい方は利用してみると良い。上の表は下記含め私が利用しているブローカーからの情報もまとめて整理したものになる。
M-REITsデータ by FifthPerson (毎日更新)

では最後に資産規模の大きいメジャーなM-REITsの個別銘柄について簡単に見て行こう。 個別REITの詳細や深堀、投資に当たっての考察等は別の機会に記事にしたいと思う。

Axis REIT

上の表の7行目のREITになる。Axis REITは倉庫や工場等の産業用収益不動産に特化して開発、投資しています。直近でネスレ用のディストリビューションセンターやその他新規資産の取得で利益が20%超も増加しており、マーケットの注目を浴びています。現在進行中の開発計画もあり、将来のパイプラインも問題無い。結果、unit単価は大幅に利益の増加率以上に上昇し、配当利回りが直近で4.7%にまで減少している(unit単価が配当額以上のスピードで上昇すると、新規unit購入者にとって配当利回りは減少する)。現在、マレーシアでは工場、倉庫などの産業用収益不動産の需要がECビジネスなどの拡大で増大しており、先の5年間は少なくとも供給不足需要過多の状況が続くと見られている。Axis REITにとってはファンダメンタルズがしっかりしているので個人的にはおすすめの銘柄だ。但し、人気が急激に高まっているので、こちらのREITは安定配当利回りよりもunit単価の上昇を期待して投資する方が良いと思う。
Axis REIT

Capitaland Malaysia Mall Trust

上の表の8行目のREITになる。キャピタランドはシンガポールの上場会社だが、マレーシアにもビジネスをもっており、その一つがこのREITになる。商業施設にフォーカスしたREITだ。足元の配当利回りは7.1%まで上がっているが、これはunit単価が1.4RM/unitから1.1RM/unitまで下落し続けている事が理由だ。なので一見配当利回りは魅力的だが、unit単価がなぜ下落し続けているのか、今後はどうなのかを見極めた方が良い。unit単価が下落した理由は、KL中心部にあるSungei Wang、The Mines、Tropicana City Mallなどの商業施設の稼働率が減少し、利益が少なくなっているためである。一方、例えばペナンにあるGurney Plazaや東海岸のクアンタンにあるEast Coast Mallなど非常に好調な商業施設も所有している。全体として、好調な資産が不調な資産の利益を相殺する形で、利益自体は微減に留まっているものの、やはり先行きの不安からunit単価が減少しているのだろうと思う。というのも、よりマクロに見た場合、マレーシアは商業施設の供給過剰がずっと続いている。今好調の商業施設も早かれ遅かれ稼働率減になるのではないか、というのがマーケットの見方かもしれない。
Capitaland Malaysia Mall Trust

IGB REIT

上の表の10行目のREITになる。Capitaland Malaysia Trustと同じ商業施設フォーカスのREITになるが、マーケットの反応は真逆だ。このREITには2つの超巨大人気商業施設を含んでいる。Mid Valley Mega MallとThe Gardens Mallだ。いずれもローカル、旅行者、駐在者、老若男女問わず、誰もが気楽に利用でき、リーズナブルブランドからハイブランドまでそろっているKLの賑わいの象徴のような商業施設だ。しかも2018年中にAEI (Asset Enhancement Initiative)を行い、それぞれ約1,000平米と1,500平米も賃貸可能スペースを増床している。また、このREITのスポンサーであるIGB CorporationはSouth Key Mid Valley Megamallを2018年12月にオープンしており、既に稼働率は90%超というから驚きだ。1-2年後にはこの新しい商業施設もIGB REITに組み入れられると予想されるためREITのパイプラインとしても申し分無い。マーケットではこのREITが買われ続け、直近ではunit単価がRM1.89にまで上昇、配当利回りも4.86%にまで下落した。時価総額はNAVより65%も高いレベルまで買われているので、いくら人気だからといっても少し買われすぎているのではないかと思う。保有資産のクオリティは申し分無いが、unit単価が高くなりすぎて、その後の何かしらのショックで価格が下落するリスクはあるように思う。
IGB REIT (Webpageメンテナンス中?)

KLCC Property REIT

上の表の11行目のREITになる。マレーシアで一番保有資産額、時価総額が大きいREITになる。保有している資産はKLの一番中心にあるKL City Centerの有名なものばかり。例えば、あのマレーシア一高く観光スポットにもなっているペトロナスツインタワーやマレーシアで一番高級なホテルであるマンダリンオリエンタルKL、さらにはそれらに直接つながっているSuria KLCCという巨大ショッピングモール等だ。その他にもKL中心部にあるペトロナスのオフィスビルなど複数保有している。オフィス、観光スポット、ホテル、商業施設と様々なカテゴリーのアセットを保有していてリスクが分散されていると見る専門家もいる。保有資産の利益は全体として横ばいに近い状態が続いているが、マーケットではやはり人気でunit単価が7.8RMまで上昇、配当利回りは4.74%まで減少している。しかしながら私個人の見方はマーケットとは少し異なる。資産カテゴリーは分散しているが、物理的な場所としてはKL City Centerというところにかなり集中してしまっている。KL City Centerは今は観光、ビジネス、ショッピングの中心となっているが、実はマレーシアでは他に超巨大複合施設開発プロジェクトが目白押しだ。例えばBBCC (Bukit Bintan City Center)やTRX Financial Center等だ。これらが完成すれば個人的には人々のトラフィックが一気に変化し、これら新規複合施設へ流れるのではないかと思う。従って、マーケットの評価は過剰なのではないかと思う。
KLCC REIT

Pavillion REIT

上の表の12行目のREITになる。こちらもIGB REITと同じく商業施設特化型REITだ。特記すべきはこのREITはKLで一番有名かつラグジュアリーなPavillion Mallを保有している点だ。商業施設が供給過剰と前述したが、このPavillion Mallは例えばKLCC Property REITが保有するSuria KLCCとは違って、何が起こっても客足は途絶えないのではないか、と思わせるほどもはや絶対的な存在になっているように見受けられる。スポンサーであるPavillion GroupはDamansaraというKL郊外に大規模複合施設を開発しているし、Bukit Jalilという同じくKLの郊外に巨大な商業施設を開発中である。これらが5年後を目途にこのREITに移されることが予想されるのでパイプラインとしても問題無いように見受けられる。唯一のリスクはIGB REITと同じく、買われすぎ感がある事だ。Unit単価は1.82RMにまで上昇し、配当利回りも4.82%にまで減少している。時価総額とNAVの乖離も35%程ある。とはいえ、IGB REITよりは過熱感は無いので投資してみる価値はあるように思う。
Pavillion REIT

Sunway REIT

上の表の15行目のREITになる。REITのスポンサー会社はSunwayというマレーシアTop3に入る開発業者だ。オフィス、商業施設、ホテル、レジデンス含めなんでも開発する。日本企業の三井不動産などともジョイントベンチャーで開発したりしている。このREITについてはSunway CityというKL中心部から車で約25分の郊外にある商業、ホテル、病院、レジデンス、オフィス、テーマパークととにかくなんでも揃っている街の主要不動産をほとんど保有している。不動産カテゴリーも分散しているし、スポンサー企業はなんでも開発するのでパイプラインとしても問題無いしで、安全な投資という観点からはこのREITが一番リスクが低い(価格の変動が少ない)かもしれない。Unit単価は1.9RMまで上がり、配当利回りは5.04%まで減少している。時価総額もNAVの約30%とマーケットではかなり評価されているREITだ。但し、一点、冒頭でも述べた通り、このREITが6%のクーポンの永久債券の発行を計画している事がリスクになる。クーポン率が6%と高い上に、既に配当利回りが5%ちょうどの水準にまで下落しているため、unit単価の下落が今後起こるかもしれない。
Sunway REIT

YTL Hospitality REIT

上の表の18行目のREITになる。最後に紹介するREITだが、このREITは名称にHospitalityとついている通り、マレーシアで唯一ホテル資産にフォーカスしたREITになっている。スポンサー企業はYTLでホテルやレジデンスの開発を行っている大手ディベロッパーだ。特にホテルに関してはラグジュアリーブランドが中心になっている。特にMarriott、Ritz Carltonブランドのホテルが多い。例えばこのREITにはJW Marriott KLやRitz Carlton KL、Brisbane Marriott Hotel等が主要資産として入っている。ユニークなのは、マレーシアだけでなく、オーストラリアと日本にもそれなりのExposureを持っている点だ。日本においてはニセコにおいてHilton Niseko VillageやThe Green Leaf Niseko Villageを取得している。しかも、スポンサー企業であるYTLの現在進行中のプロジェクトとしてRitz Carlton Reserve NisekoやEdition Niseko、さらにはW Hotel Nisekoもある。この内すでにRitz Carlton Reserve Nisekoは建設が開始している。他の2つはまだ案の状態だ。これらのアセットも2022年以降から順次このREITに組み入れられると考えられるためパイプラインも豊富である。にも拘わらずマーケットでは時価総額がNAVよりも15%ほど低く、配当利回りも6%弱ある。恐らく、直近のBrisbane Marriott Hotelの利益の減少が反映されていると思うが、実はこの原因はこのホテルの改修工事のために販売できない客室があるからである。2019年第三四半期中に改修工事は終わるので、2019年後半にかけてREITの利益は増える見込みだ。不動産タイプはホテルに集中しているが、地域分散ができている点も魅力だ。個人的にはこのREITは買いだと思う。
YTL Hospitality REIT

  • Kufong
  • 上海生まれ、日本育ち、米国留学、そしてマレーシア移住。妻と一人娘と一緒にクアラルンプールで仕事をしながら楽しく生活。資産運用、レストラン巡り、旅行、そしてマレーシアが大好き。金融工学修士修了、CFA (Chartered Financial Analyst)。